interviewスタッフインタビュー

患者さんの生活背景にも配慮し、
安心感の高い手術治療を提供する

外科 管理者 関戸 仁

外科では消化器外科や肛門外科、乳腺外科など広い領域にわたり、安心してお任せいただけける技術と体制を備えています。身体への負担が少ない腹腔鏡下手術を積極的に実施し、女性医師による乳腺外科外来も始めるなど患者さんにやさしい医療を提供。外科における近年の取り組みや治療に向ける思いについて、管理者の関戸仁先生に語っていただきました。

消化器や乳腺の病気、肛門疾患など幅広い領域の外科的治療を担う

外科では消化器や乳腺の病気を中心に幅広い診療を行っています。私が担当する消化器外科に関して言うと、症例数が多いのは鼠径ヘルニアや胆石です。これらの病気は罹患率が高く、当院が市中病院であるという特性からこのような傾向があるのだろうと思います。次いで多いのは消化器がんです。がんに対しては手術だけでなく、手術の前、あるいは手術後の化学療法、放射線治療も積極的に行っています。消化器がんの中でも特に大腸がんの患者さんは全国的にも増えており、ここでも大腸がんを診療する機会が非常に多くなっているのが現状です。

ちなみに、私は自分の手を使って病気を治す仕事が性に合っていると思い外科医を志しました。現在は消化器外科の中でも特に肝臓やすい臓、肝道系の病気を専門としています。この分野は治療が難しいことで知られていますが、「どうせやるなら」と思って選び、現在に至っています。

合併症を含め、手術を受ける患者さんのすべてを責任持って診る

私たちは、初診でかかった時点からの診断・治療、さらにがんの場合は万一再発してしまった場合も、最後まで一貫して任せていただける体制を整えています。がんセンターのような専門の医療機関の場合、そこで手術を受けた後の治療は地元の病院に移って行うこともあり、当院でもそのような患者さんがいらっしゃいます。また、がんセンターではがん以外の治療を受けられないことがあります。例えば、消化器がんの手術後に腸閉塞を起こすことがあるのですが、そのような場合も地元の病院で治療したりするわけです。実際に手術後に腸閉塞を起こして当院で治療した患者さんの中には、「それなら最初から、この病院でがんの治療をしてもらえば良かった」とおっしゃる方もいます。当科では手術後の合併症や再発も含め、消化器がんの外科的治療についてすべて対応する技術を備えているので安心してお任せいただければと思います。

女性が気軽に受診できるように、女性医師による乳腺外来をスタート

近年は乳がんの患者さんがかなり増えているため、私たちは乳がんの治療にも力を入れています。乳腺の病気は男性にも見られますが、患者さんのほとんどは女性で、多くの方は男性よりも女性の医師を希望されます。そこで私がこちらに着任してすぐに始めたのが、女性の乳腺専門医による乳腺外来です。現在のところ月2回のみではありますが、患者さんの気持ちに配慮して現在の外来の体制を作り、男性の乳腺専門医とともに治療に当たっています。

なお、乳腺の病気に関しては、外来診療だけでなく検査も女性が担当するようにしたいと考えています。乳がんの診断に必要な乳房のレントゲン、マンモグラフィを受ける時も、やはり女性の検査技師にお願いしたいという女性が多いからです。検査技師の育成にも力を入れてきたので、2023年4月からはマンモグラフィについてもできる限り女性が担当する予定で準備を進めています。

手術方法を決める際は、患者さん一人ひとりの生活背景も視野に入れる

消化器疾患の手術には、お腹を大きく開いて行う開腹手術と、お腹に開けた小さな穴から内視鏡という器具を入れて行う腹腔鏡下手術があります。腹腔鏡下手術は技術的には難しくなりますが、患者さんの身体的負担が大きな開腹手術と違い、負担がかなり軽減されるという特徴があります。状況によりますが、高齢の方にはできるだけ腹腔鏡による手術を行う方向で検討しています。

私たちが常に心がけているのは、患者さん一人ひとりの背景をしっかり汲み取ることです。同じ病気の患者さんでも、家族構成や生い立ち、仕事などは皆さんまったく異なるので、目の前の患者さんの背景まで配慮して診療することが欠かせません。この地域には70代、80代の方が多く、90歳を超える患者さんもいらっしゃいます。農業や漁業が盛んだという三浦半島の土地柄でしょうか、高齢でも体力的には元気な方も見られます。毎日よく体を動かしている方には腹腔鏡下手術で筋肉の損傷を最小限にするほうがいいのではないか、手術方法を決めるときはそういったことも考慮します。もちろん職業によって手術の方法が決まるわけではありませんが、患者さんのお仕事も参考にするべき要素の1つだと考えています。

手術後の患者さんの元気な姿を見るのが一番のやりがい

外科医としてやりがいを感じる瞬間は多々ありますが、一番よく実感するのは、大きな手術を終えた後の経過が良い患者さんにお会いする時です。前任地での話ですが、大腸がんですでに肝臓にも転移していた方の手術を行ったことがありました。肝臓と大腸を同時に手術するという、12時間かかるほどの大手術でしたが、比較的若い方だったこともあって術後の経過は良好でした。手術しなければ余命3カ月という状態だったにもかかわらず、大腸がんの腫瘍マーカーの1つであるCEAも正常値まで下がり、一時は完全に社会復帰して元気に過ごされたのです。最終的には残念ながら再発してお亡くなりになったのですが、それでも手術の後に元気にしておられる姿を見るのは感慨深いものがあります。

もう1つ、私のやりがいとなっているのが、面識のある医師から「手術を担当してくれませんか」と依頼されることです。それが麻酔科の医師であればなおさらです。麻酔科医は外科医の手術を一番間近で見ているわけですから、そんなシビアな目を持つ人から手術してほしいと言われるのは嬉しいことです。医師会の関係者や開業医、さらに消化器外科の教授からご自身やご家族の手術を依頼されることもあります。同じ医療従事者から手術を希望されるのは信頼の証ですから、そんなふうに思ってもらえるのは本当にありがたいですね。

若い外科医を育てることで地域医療に貢献していく

ただし、「ぜひ関戸先生に」と指名されたら喜んでお受けしたいのは山々ですが、手術は若手の医師に執刀してもらっています。患者さんがどのようなお立場、ご職業であっても、そこは公平を期すべきだと思うからです。もちろん手術には最初から最後まで私も立ち会い、万一何かあった時は一緒に行うというスタンスで診療しています。

すべての診療科に通じることですが、診療のレベル、手術などの治療技術を上げていくことは非常に重要です。外科では手術治療が1番の柱であるため、私たちの使命は手術によっていかに安全な治療を行うか、これに尽きます。そのためには若手の医師もしっかり育成しなければなりません。しかし、外科系は内科系以上に体力が必要ですし、手先のトレーニングも必要だったりと大変な面があるせいか、最近は外科医の成り手が少なくなったと言われます。でも、若い外科医を増やしたいからといって、ゆるめてはならない部分があります。患者さんは外科医に命を預けてくださっているわけですから、厳しく指導せざるを得ません。私は手術中もかなり厳しく指導するので、若手の医師にはかなり恐れられているかもしれませんね。

現在、外科には私を含めて6人の医師がいますが、非常に有望な医師が育っています。現在の方針をゆるめることなく若い医師を育て、地域の皆様から信頼される外科となるよう努めたいと思います。

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