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心不全は、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。十分な量の血液を全身に送れなくなり、また、肺や肝臓などに血液が滞って、呼吸困難やむくみ、動悸、疲労感など、さまざまな症状が引き起こされます。心不全は、高齢化社会を迎え、患者数は増加傾向にあります。
心不全には、急に発症する急性心不全と、徐々に発症する慢性心不全があり、急性か慢性かによって治療法が違ってきます。慢性心不全が重症化すると、経過中に何度も急性増悪(急性心不全の発症)を起こし、その都度、入退院を繰り返すようになります。
心不全の症状としてよく見られるのは、呼吸困難や足のむくみ(浮腫)です。心不全になると、全身の臓器や血管で血流が滞ります。血液が滞留する(うっ血を起こす)と体液量が増加するので、体重が急激に増加します。また、尿の量が減り、下肢などにむくみが現われます。肺でも血流が滞り、水が溜まるので(肺水腫)、血液への酸素の取り込みが邪魔され、肺が膨らみにくくなります。その結果、息切れや呼吸困難が生じ、疲れやすさや倦怠感、体のだるさなどを覚えるようになります。階段や坂道を上っていて息が切れたり、動悸がしたりすることがあります。
主に心臓から分泌され、心筋を保護する働きをするBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンがあります。このBNPは、心臓に負担がかかったり心筋が肥大したりすると、血液中に多く出てきます。自覚症状が出る前から血中濃度が上がるので、BNPの測定は心機能低下の早期発見に役立ちます。
心臓の大きさや肺のうっ血、胸水の有無などを評価できます。心臓の状態が悪くなると心臓の陰影は大きくなります。
超音波(エコー)を使って心臓の状態を調べるものです。心臓の動きや弁の状態、心臓の大きさ、心臓肥大の有無、先天性心疾患(生まれ持っての心臓の異常)の有無などを評価します。心不全の原因としての心臓弁膜症や高血圧性心疾患、心筋症、先天性心疾患の存在を見つけるきっかけになります。
MRI (Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)とは、磁力と電磁波の力によって、断面像を撮ることができる画像診断装置です。心臓MRIは、心臓の動きや心筋の状態を評価することができます。心筋症の鑑別や心筋梗塞の梗塞範囲の評価などに有用です。
急性心不全患者の多くは、集中治療室(ICU)やハイケアユニット(HCU)に入院となります。肺うっ血により低酸素血症(体内の酸素が足りない状態)を伴っており、酸素投与が必要になります。重症の低酸素血症であれば、非侵襲的陽圧換気(気管挿管しない呼吸器管理)や人工呼吸器管理が必要になります。薬物治療としては、うっ血を改善する利尿薬や血管拡張薬、心筋の収縮力を強める強心薬などが用いられます。薬物治療によっても血行動態が改善しない場合は、機械的に心臓のポンプ機能を補助・代行する補助循環法であるIABPやECMOが検討されます。
慢性心不全の治療は、まずは生活管理と薬物治療になります。生活管理として重要なのは、うっ血を改善するための塩分制限です。1日に6グラムに抑えます。過剰な水分の摂取も控えます。過度な身体活動は心不全を悪化させますが、過剰な運動制限も心臓の循環調整力を低下させます。医師と相談しながらの、状況に合わせた運動療法が求められます。
「歩いていると息苦しい」「足がむくんできた」などの症状をお持ちの方は、一度循環器内科を受診してみることをお勧めします。
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