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食物は食道‐胃-小腸を経由して消化吸収されていきます。大腸は小腸に続いて右下腹部からおなかの中をぐるりと大きく時計回りに、はてなマークのようにして(図参照:盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸の順に)肛門へ通じる食物の最後の通り道です。大腸には栄養の消化吸収作用は殆どありませんが、水分を吸収するため、小腸で吸収された食物の残りは大腸を進む過程で段々と硬い固形の便になって肛門から排泄される仕組みになっています。
この大腸(結腸・直腸)に発生するのが大腸がんで、日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。国立がんセンター最新がん統計によれば2020年では大腸がんは男性の死亡順位で肺がん、胃がんについで3位、女性では1位で、全体では肺がんについで2位です。
大腸がんになっても、早期では自覚症状は殆どありません。しかし腫瘍が大きくなってくると、血便(便に血が混じる)、下血(赤色や赤黒い便がでる)などの症状が出てきます。これらを「痔などでもみられる症状だから」といって放っておくと腫瘍が進行してしまうことになります。
また腫瘍の増大に伴って、腫瘍は出血しやすいため慢性出血による貧血の症状や、便の通り道が狭くなって便秘や下痢を繰り返したり、いよいよ便の通り道が狭くなってくると腸閉塞に至る可能性もあります。
また大腸そのもので悪さするだけではありません。大腸がんでは主に肺や肝臓など遠くの臓器にがん細胞がとんで増殖する「転移」することがあり、これらの転移が先に発見されることもあります。
診察の結果大腸がんの疑いがあるときには、大腸内視鏡検査を行い、がんなのかどうか組織を採取しての確定診断を行います。治療方針を決めるためにがんの場所を特定して広がりを知るためにはCTやMRI検査等の画像検査を行います。
大腸がんの治療には、内視鏡的治療、手術による切除、薬物療法、放射線治療などがあります。治療法の選択には、がんの進み具合(病期:ステージともいいます。)、患者さんの全身状態、年齢、併存する他の疾患等も考慮して決定します。がんが切除できる場合には(早期のもの中心に)内視鏡治療または手術を行い、切除できない(取り切れない場合)ときは薬物療法を中心に治療を行います。よりがんが進行している場合では総合的に治療方法を判断します。従来ならば外科的切除が困難とされてきた病変でも、近年の薬物療法の飛躍的進歩により、薬物療法(化学療法)が奏効した結果、手術による切除が行われて長期生存される例もあります。
多くの病気がそうであるように、早期発見、早期治療が大事です。
多くの自治体では40歳以上の方は大腸がん検診をうけることができますし、あるいは先に挙げた症状でお悩みの方はお近くのクリニックやかかりつけの医療機関にまず相談して頂くのがよいと思います。
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